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UPADATE:2022.11.15
CATEGORY:SPECIAL
THE ONE – Vol.3 – 森本 直樹 from IDÉE
少しブランクがありましたが、『THE ONE』の第3回目です。
今回のゲストはオリジナルデザインの家具やインテリア雑貨を取り扱うインテリアショップ、イデー(IDÉE)のアートディレクター 森本直樹さんをお迎え致しました。
KNAPFORD POSTER MARKET 井上(以下 井上):
今日はゲストとしてイデーの森本直樹さんをお迎えしました。よろしくお願いします。以前からお世話になっている森本さんにご登場いただけて嬉しいです。切望しておりました!!
イデー 森本さん(以下 森本) : ありがとうございます。
井上:早速ですが、今回はクリストファー・ウールが制作したこちらのポスター作品をセレクトされた理由をお聞かせください。
森本 : 前々からウールはとても好きなアーティストの1人ですが、ポップアートとは対照的な、ニューヨークパンク的な作風が好みなんです。何か音楽的だったり詩的な感じがありますね。コッポラの『地獄の黙示録』とか、リチャード・ヘルの胸に刻んだワードを引用したりして。5月にパリのブルス・ドゥ・コメルスという現代美術館に行った際にフェリックス・ゴンザレス=トーレスの展示を観た後ということもあり、この作品を選びました。
井上 : もともとこの作品はクリストファー・ウールとフェリックス・ゴンザレス=トーレスのコラボですね。この作品の気になるポイントは?
森本 : モノクロでアルファベットのメッセージだけが浮き彫りになるところと、ステンシルの雰囲気もクールでザラっとした質感の部分。記号的なところも魅力的です。
井上 : 今回はこのポスターを中心にレイアウトされてますが、こだわりポイントは?
森本 : イデーでも一番アーティーな家具、マーク・ニューソンの工業的な照明と合うかなと思い、同じくマークのウィッカーチェアーと共に合わせました。以前ニューヨークへ行った際に体感したアンダーグラウンド文化が好きで、あの雰囲気が空間にもたらす無骨な作用が好みだったので、そのような雰囲気で。
井上 : ウールに限らず『ポスター』の魅力ってどんなところにあると思いますか?
森本 : レコードジャケットにも似てますが、ストリートアート+旬のグラフィックの組み合わせがポスターの魅力だと思います。他にもヴィンテージポスターの希少性やシルクスクリーンやリトグラフなどの印刷技法なども魅力ですね。大量印刷ですが、インクのノリが印刷手法によって違ってきたり、すべてのエディションが同一ではないところも。ファインアートとはまた違う切り口で価値がある。
あとオリンピックなどのポスターも。例えば以前ナップフォードさんで個人的に購入したサイ・トゥオンブリーのサラエボオリンピックのポスターや、他にも東京オリンピックのワイズベッカーのポスターなど、大好きですね。
井上 : 国内外で感じるポスター・アート文化の違いはどこにあると思いますか?
森本 : アートに対する考えは欧米の方が成熟していますね。一点もののオリジナル作品はもちろん価値が高いですが、欧米だと、このポスターのようなウールやトーレスのインスタレーションで印刷物が床に山積みになって展示され、来場者がそれを自由に持って帰る行為自体が現代アートの一部であったり、マルチプルとしての新たな切り口が面白い。あと仕事柄、印刷の質感に興味があります。リトグラフなどの伝統的な技法で、職人との共同作業により生まれる印刷物としての価値が欧米では認められますね。様々な切り口で価値を見出していて面白い。そういった価値観には影響を受けています。
井上 : ありがとうございます。最後にイデーさんの今後の展開についてお聞かせください。
森本 :パリの伝説的なリトグラフ工房Idem Parisで、ピカソやマティスといったアーティストが刷っていた印刷機で新たにリトグラフ作品を作りました。今回、柚木沙弥郎さんにイデーでの3回目となるシリーズをお願いし、その新作のリトグラフが10月にご生誕100年記念として発表され、展示会はイデー東京と梅田店で開催し、現在はイデー全店で販売しています。
その柚木さんもイデーに来た時に、ウールのポスターを見て気に入り2つほど買っていただいたことがあります。
井上 :それはなんだか嬉しいですね。これからのイデーさんの展開も楽しみにしています。ありがとうございました。
お話されている最中、シャイな感じでお話しされていた森本さん。アート、ポスター、デザインに思い入れが感じられ、静かながらも言葉に力強さが宿っていました。私個人的にも色々勉強になるお話で、楽しい時間を過ごしました。
森本さん、そして撮影いただいた福崎さん、ありがとうございました。
THE ONE
第3回目ゲスト 森本 直樹 (IDÉE アートディレクター)
撮影 福崎 幸治 (IDÉE SHOP Jiyugaoka 店長)
撮影場所 IDÉE SHOP Jiyugaoka 3F GALLERY AND BOOKS ( @ideegalleryandboo )